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達人インタビュー

イラストレーター sick

飽くなき向上心と競争心、そして反骨心を持ち続けること

アパレル、フライヤー、CDジャケット、ステッカー、商業POPなど、幅広いジャンルのイラストやデザインに携わるsick氏。かつてはストリートで自らの作品を販売していたそうです。

今回は、ストリート時代の話や、その名残が残る作画環境などについてお話をうかがいました。

sick先生写真

イラストレーターになったきっかけを教えてください。

高校時代は絵を描くことは好きでしたが、美術の授業はサボってました(笑)。それ以上に3DCGに興味があったんです。絵よりも、どちらかというとバンドや部活に明け暮れる高校時代でしたね。

高校卒業後も3DCGが学べる専門学校に進学しました。ただ、就職先はやはり多くなく、卒業時に3DCG関連の会社には就職できなくて…。

その時にフリーランスになることは考えなかったんですか?

当時は3DCGの制作ソフトだけで100万円ぐらいする時代でしたから、とてもフリーランスでは無理で。結果的に、未経験ながらグラフィックデザインの会社に入社することができ、そこで働きながらIllustratorやPhotoshopといったソフトの使い方を学んだり、仕事の経験を積ませてもらいました。

商業POPや飲食店の看板など、結構色々な仕事をやらせてもらいました。ただ、「商業デザインの仕事は自分がやりたいこととは全然違う」という気持ちが、ずっと心の中にありましたね。

それでストリートでの販売を始めたんですね。

働いていたデザイン会社が、倒産の危機にあると感じていたのも理由の一つです。もちろん再就職も考えましたが、就職すると自分が本当にやりたいことができないこともわかっていましたから悩んでいました。

そんな時に知人がストリートで販売しているのを知り、面白そうだと思って始めたのがきっかけです。当時は、ちょっとストリートで頑張れば、すぐにバンバン売れて仕事がたくさん舞い込むと思ってました。若気の至りですね(笑)

ストリートでの販売は大変だと聞きます。

7~8年程ストリートでの販売だけで暮らしていました。コミケやアートイベントへの参加が増えたり、仕事の依頼が増えたために毎日ストリートに出る時間が取れなくなり、5年ほど前にストリートでの販売はやめました。

毎日ストリートに出てた時は、楽しかったけど本当に大変でした(笑)

最も苦労した時期というと、まさにそのストリート時代ですか。

食事を買うか、タバコとコーヒーを買うか、どちらにするかいちいち迷ってましたね(笑)。
本当に生活はギリでした。

あと、ストリートの販売って基本的に道路使用許可を取っていないので、警察との追いかけっこになります。これが大変でした。今となっては全部笑い話ですが(笑)

自分の作品を描く際に意識していることがあれば教えてください。

自分よりも絵がうまい人はたくさんいることを常に意識しています。だからこそ、クライアントからご依頼いただいた仕事は、相手のイメージをどう形にしていくか、とても気を遣います。

相手が自分のどんな部分を気に入って、あるいは期待してご依頼いただいているのかを常に考えながら描くようにしています。

もう一つは、描いてる途中も描いた後も、常に自分の絵を客観的に見るようにしています。

可能であれば、完成してもすぐ納品せずに一日置き、改めて自分のイラストを客観的に見てから納品するようにしています。

作画環境を教えてください。

フルデジタルで描いています。下書きもほとんどしませんし、ペンタブも使いません。あと、ストリート時代からずっとマウスを使って描いています。ストリート時代はペンタブを使っている仲間がいなくて、マウスで描くのが当たり前だと思っていました。

作画にはIllustratorやPhotoshopを使っているので、マウスでも曲線を描くのには苦労しませんし。ただ、勉強も含めて本格的なペンタブを購入してみようかと思っているところです。

今後描いてみたいお仕事のジャンルやテイストがあれば教えてください。

自分自身が面白そうだと思ったら、どんな仕事でもジャンルでもチャレンジしてみたいですね。ただ、ソーシャルゲームのキャラクターなんかは、特にやってみたい気がします。私のイラストのタッチで描かれたキャラクターって見たことないですし。

描きたいものを描くのも楽しいですが、最近は仕事のご依頼のお題をどう描いていくかを考えるのも楽しいと思えるようになってきました。

これからプロをめざす人にアドバイスをお願いします。

プロをめざすならどんなことがあっても心折れずに継続すること、これに尽きます。私自身、ストリートで何度も心を折られながら、それでも諦めずにやってきたから今がある。

私よりも全然絵が上手なのに、心が折れて絵の世界から身を引いていった仲間をたくさん見てきました。

もう一つは仲間を大切にすることです。先輩や後輩、友達が、自分を奮い立たせてくれた場面が何度もありました。

そして最後にもう一つ、飽くなき向上心と競争心、そして反骨心を持ち続けること。これらがあれば、必ずプロでもやれると思いますよ。